X線セファログラム(頭部X線規格写真)
「歯チャンネル」の回答者をしていますが、矯正歯科関連の回答には良く「セファロ」という言葉が出てきます。 歯科矯正学の講義みたいですが、今日はこの「セファロ」いついて、まとめてみましょう。
「セファロ」、「頭部X線規格写真」、「セファログラム」などいくつか呼び方がありますが同じものと思っていただいてかまいません。
「セファロ」の歴史は意外と古く、1931年 B. Holly Broadbent, Sr. 先生(ブロードベント先生)が開発したもので、当初はヒトの成長発育の観察をする目的で使用されました。
一定の規格(写真の倍率・方向・角度)で撮影されたもので、他の人や集団との比較、同じ方の時系列的あるいは口腔内装置着脱時の比較が客観的に行える画像診断法のひとつです。このレントゲン写真のもうひとつの特徴は、軟組織と硬組織が同時に観察できることです。平たく言うと、肉と骨が同時に見えるレントゲンということになります。
つまり、「鼻」「唇」「オトガイ」が移ります。これで、E-lineイーラインの評価ができます。
歯学部の概ね6年生でうける病院実習でも、矯正歯科外来での3週間(3ヶ月ではない)の間に、セファロ分析の実習もあります。この短い期間ですから、体験レベルと突っ込まれても致し方ありません。すべての歯学部の卒業生が、矯正歯科への進路を選択するわけではありませんので、カリキュラム上はこうならざるを得ません。
矯正歯科診療をセファロなしで行うのは、携帯電話を持たずに長期の旅行へ出かけるくらい心細いものです。もっとも、携帯電話のない時代なら仕方ありませんが・・・。
例えば、上の前歯が出ていることを悩んでいらっしゃる方の場合、上の歯が一見出ているように見えますが、 上の前歯が傾斜して出ている
- 上の前歯が前に傾斜している
- 上の歯が生えている骨の位置が前方にある
- 上の歯や骨は正常な位置にあるが、下の前歯が後方へ傾斜している
- 上の歯や骨は正常な位置にあるが、下のアゴのポジションが後方にある
- そもそも、下あごのサイズが小さい
- これらの複合形
これらのことは、「セファロ」を使わないとわかりません。治療方針が、前歯が出ているといって単純に引っ込める発想では睡眠時無呼吸症を医原的に作る可能性さえあります。
睡眠時無呼吸症の治療に使う「口腔内装置」も、装着時にセファログラムによる気道狭窄の有無の確認が重要です。セファロなしでの口腔内装置作製には、時として睡眠時無呼吸症を悪化させているのを見過ごしてしまうリスクさえあります。